財務報告の目的
財務報告の目的は投資者による企業成果の予測と企業価値の評価に役立つような企業の財務状況の開示、具体的には企業の投資のポジション(ストック)とその成果(フロー)を開示することである。
自己創設のれんの計上は、経営者による企業価値の自己評価・自己申告を意味するものであり、投資者が自己責任において、投資を行うのに必要な情報を提供するという財務報告のの目的に反すると考えられる。
会計情報の質的特性①
会計情報に求められるもっとも基本的な特性は、意思決定有用性である。意思決定有用性は、意思決定目的に関連する情報であるという意思決定との関連性と、一定水準で信頼できる情報であるという信頼性に支えてれている。
会計情報の質的特性②
意思決定との関連性とは、会計情報が将来の投資の成果についての予測に関連するないようを含んでおり、企業価値の推定を通じた投資者による意思決定に積極的な影響を与えて貢献すると言う特性である。意思決定との関連性は情報価値の存在と情報ニーズの充足により支えられている。
信頼性とは、会計情報が信頼に足る情報であるという特性である。信頼性は、中立性、検証可能性、表現の忠実性の3つ特性により支えられている。
一般的制約となる特性について、内的整合性と比較可能性がある。内的整合性とは、現行基準の体系と矛盾しない個別基準を採用するよう要請する特性である。また、比較可能性とは同一企業の会計情報を時系列で比較する場合、あるいは、同一時点の会計情報を企業間で比較する場合、それらの比較に障害とならないように会計情報が作られているように要請する特性である。
階層全体を支える一般的制約となる特性として位置づけられる。
財務諸表の構成要素の定義
資産とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源をいう。
負債とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を放棄若しくは引き渡す義務、またはその同等物をいう。
純資産とは、資産と負債の差額をいう。
株主資本とは、純資産の内、報告主体の所有者である株主に属する部分をいう。
収益とは、純利益または、少数株主損益を増加させる項目であり、特定期間の期末までに生じた資産の増加や負債の減少に見合う額の内、投資リスクから解放された部分である。
費用とは、純利益または、少数株主損益を減少させる項目であり、特定期間の期末までに生じた資産の減少や負債の増加に見合う額の内、投資リスクから解放された部分である。
概念フレームワークにおける包括利益・純利益
①純利益
純利益とは、特定期間の期末までに生じた純資産の変動額(報告主体の所有者である株主、子会社の少数株主および将来それらになりうるオプションの所有者との直接的な取引による部分を除く)のうち、その期間中にリスクから解放された投資の成果であって、報告主体の所有者に帰属する部分をいう。
②包括利益
包括利益とは、特定期間における純資産の変動額の内、報告主体の所有者である株主、子会社の株主、および将来なりうるオプションの所有者との直接取引によらない部分をいう。
事業投資と金融投資、実現と実現可能
①投資リスクからの解放とは、投資に当たって期待された成果が事実として確定する事をいう。
②事業投資とは、売却する事に事業遂行上の制約があり、企業が事業の遂行を通して成果を得る事を目的とした投資である。
事業投資リスクの解放とは、事業のリスクに拘束されない独立の資産を獲得したとみなす事ができる事実をもってリスクから解放されたものとする。
③金融投資とは、売却する事に事業遂行上の制約が無く、公正価格(時価)の変動によって利益を獲得することを目的とした投資である。
金融投資のリスクからの解放とは、金融投資は事業の目的に拘束されず、保有資産の値上がりを期待した金融投資に生じる価値の変動事実をもってリスクから解放されたものとする。
④実現した成果とは、売却と言う成果に裏付けされた成果、すなわち非貨幣性資産の貨幣資産への転換という事実をもって投資の成果を認識する。
⑤実現可能な成果とは、現金またはその同等物への転換が容易である(あるいは容易になった)事をもって投資の成果を認識する。
当期業績主義と包括主義
①当期業績主義とは、
損益計算書の作成目的を期間的な業績利益の算定、表示と考え、そのために、期間損益(経常利益)のみで、損益計算を行い、損益計算書を作成するという考え方をいう。
論拠は、損益計算書が当該期間の経営活動の状況下で、企業がどれほどの利益を獲得できたかということに関心を持つ人々に情報を提供することにある。
②包括主義とは、
損益計算書の作成目的を期間的な処分可能利益に算定、表示と考え、その為に、期間損益(経常利益)のみならず、期間外損益(特別利益)も含めて損益計算を行い、損益計算書を作成するという考え方をいう。
論拠は、伝統的な企業の基本目的である損益計算が、投下資本の回収余剰としての利益(処分可能利益)を算定する事を基本課題としている事にある。
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